アウトリーチ活動20年目を迎えて

【アウトリーチ活動の動機】

 2001年9月11日に母校新開小学校でアウトリーチ活動をスタートさせ、今年で20年目を迎えます。2001年当時の日本では、演奏家が学校訪問し子供たちに演奏をするという習慣があまり普及していなかったように記憶しています。

 

 ちょうどその頃、私は留学先のハンガリー生活も7年目。ブダペストで毎日のように開催されているコンサートに足を運んでいると、音楽を専門に学んでいる子供たちだけではなく、夜遅くまで音楽会に足を運んでいる沢山の子供たちの姿をよく見かけました。背筋を伸ばして家族と一緒に夜遅くまで目をキラキラさせながら演奏を楽しんでいました。「どうしてこんなにも幅広い世代の人々がホールに足を運ぶのだろうか?」と不思議に思いました。

 

【恩師とのお話から動き出したアウトリーチ活動への道】

 そんな時、尊敬する恩師や、ハンガリーの沢山の著名なアーティストが「若い時には学校訪問コンサートをしていた」という事を耳にし、幼少期から自然な流れで身近な場所で演奏会に参加できる「学校での音楽会」に着目しました。 「日本、特に生まれ育った故郷徳島で学校コンサートはできないものか?」と考えた末、私の小学6年生時にお世話になった担任の先生に帰郷した際お会いして恐る恐るご相談したところ、「できるかも」とのご返答。アドバイスをいただきながら、私のアウトリーチ活動はスタートしました。

 

【アウトリーチ活動 開始】

 まずはハンガリー人のバイオリニストをブダペストから招き、バイオリンとピアノのデュオで7校の学校を回り演奏をしました。恐る恐る始めた活動でしたが、子供たちの澄んだ瞳や子供たちとの合唱やトークを交えた掛け合いは、私の予想を遥かに超えた空間が生まれ、これは継続したい!と強く思うようになりました。2002年にはハンガリー人の女流バイオリニスト、2003年にはハンガリー人のチェリストをお招きし、デュオコンサートを行ない、『国際感覚を身に付けながら音楽を身近なものに!』という現在のコンセプトが少しずつ出来上がってきました。

 

【アウトリーチ活動の現在・今後】

 アウトリーチ活動20年という年月の中で、沢山の方々のご協力もあり、多くの学校で演奏させて頂きました。山の学校、海の学校、東京の大都会にある学校、全校生3名の学校、1000名を超える学校。 今でもそれぞれの空間が、つい最近のように思い出しますが、音楽を続けていなかったら出会うこともなかった学校の先生方や子供たちとも触れ合うことができ、私自身が沢山のことを学ばせていただいたように思います。毎回、本気で臨んだ分、子供たちの反応も本気で返してくれます。 これからも、体力が続く限り、自分の経験を活かし、音楽を通して、子供たちに生きるために大切なことを伝えていきたいと思っております。子供たちには音楽に限らず、自分の好きなことを見つけ、何事もあきらめずに、自分らしい道・夢に向かって歩いてほしいと願います。

山本貴子
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